二〇世紀を代表する思想家ミシェル・フーコー(一九二六‐八四年)がその経歴の最初期に焦点をあてたのは「狂気」と「精神医学」であり、三四歳で世に問うた『狂気と非理性』は、のちに『狂気の歴史』と改題されて今日まで読み継がれ、『言葉と物』や『監獄の誕生』と並ぶ代表作となっている。ところが、「狂気」というテーマは、その後、後景に退いていき、フーコー自身が、かつての狂気研究の価値を小さく見積もる発言を残している。このことは何を意味しているのか―精神医学の大家が、長年にわたる臨床経験に立脚しながら巨大な謎に挑む。